第七十二則 中邑み猴


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 衆に示して云く、江を隔てて智を闘はしめ、甲を遯ぞけ兵を埋ずむ。覿面すれば真鎗実剣を相持す、衲僧の全機大用を貴とぶ所以なり。慢より緊に入る。
試みに吐露す看よ。

挙す、仰山中邑に問ふ、如何なるか是れ仏性の義。邑云く、我汝が与めに箇の譬喩を説かん、室に六窓あり中に一み猴を安く、外に人ありて喚んで猩猩といえばみ猴即ち応ず。是の如く六窓ともに喚べばともに応ずるが如し。仰云く、只だみ猴眠る時の如きは又作麼生。邑、即ち禅牀を下って把住して云く。猩猩我汝と相見せり。

 智を闘はす、項羽劉邦に云うて日く、徒に天下を騒がして数歳に及ぶ、願はくは雌雄を決せんに民を苦しめることなければよしと、劉邦笑って云く、我むしろ智を闘はしめて力を闘はしむること能ず。というまあ故事来歴、甲胄を退け兵を埋めは、秦卒何万人を穴埋めにしたのを思い出すが、漢の歴史に項羽は頭の悪い粗暴な男にされてしまった、由来中国は歴史を歪める民族らしい、共産党というのが粗悪品で、ものみな労働時間で見るというあんちょく、人間のデカタンスのまあどんじり、あとは暴発、収拾のつかない社会ですか、でもそんなことはさておき、一個人常に一個人の債務を背負い、これをどうにかしようとするただこれ。覿面すれば真鎗実剣です。痛いかゆい切れば血が出ること同じ、ゆえにもって衲僧の全機大用をとうとぶ所以です、傷つけ分析など、人の救いにはならんです、ものみなデカタンスぶっこわれとは無縁です、たとい自然破壊も、なに草っぱ一枚ありゃ完全無欠。中邑洪恩禅師は馬祖道一の嗣、仰山はい山の霊祐の嗣、み猴のみはけものへんに爾で、大猿のこと。六窓そうは別の字書くんですが窓と同じ、六根眼鼻耳舌身意、色声香味触法の六根門をいう、いえ別に六つの窓でいいです、これ云えば大猿は全機大用の心ですか、でもまあそんなん面倒です、いざとなったらどんと出て把住、ひっとらえてこれこれってやって下さい。たしかに仏はほどけ、自縄自縛の縄を解くにしろ、見えぬものこれ仏にしろ、三世の諸仏知らずにしろ、大用全機を損なう、あるいはかすっともかすらない、六根清浄といって修行して滝に打たれするんですか、そりゃどうもあんまりつまらんですよ。あるのはどんなに磨いても、なきに如かずってね。

頌に云く、雪屋に凍眠して歳摧頽。窈窕たる羅門夜開かず。寒槁せる園林変態を看る、春風吹き起こす律筒の灰。

 どうもあんまりこの頌のように見えんのだが、すんばらしい言語のわざですか、詩は情景に従って読むによし、雪屋に凍眠して歳摧頽くだけつかれる、せっかく大猿も斉天大聖ってわけに行かんのは、凡人とかまえて凡人付き合いだからですか、窈窕たるあれは桃だったですか、その家室によろしからんと、詩経国風にあるのしか知らんですが、幽深閑静なる様だそうです、羅門とばりですか夜開かず、眠っているんですな、仰山若し眠っていたらどうなるんだと聞く、アッハッハさすが仰山、中邑の六根清浄どうもあんまりぱっとせんです、一矢報いたとたんに禅牀を下ってどかんひっとらえる、いやさすがってわけで、寒槁せる、冬枯れの木です園林変態がらっと変わるんですか、目覚めにゃそりゃいかんです、役には立たん、春風吹き起こすところは、律筒は竹ですってさ、松には古今の風、竹には長幼の節、まあそういったわけで竹の灰をばらまくんです、どうもお粗末ってんですか、ざんばら髪おんぼろ衣の拾得が、にかあと笑って大地指さす。

画像の出典  れんげ、ノースポール、マリーゴールドの寄せ植え/静岡県
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by tozanji | 2005-07-10 00:00 | 従容録 宏智の頌古


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