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第八十七則 疎山有無

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 衆に示して云く、門閉ざんと欲すれば一拶して便ち開く、船沈まんと欲すれば一蒿して便ち転ず。車箱谷に入って帰路なし、箭筈天に通じて一門あり、且らく道へ甚麼の処に向かって去るっや。

挙す、疎山い山に到って便ち問ふ、承たまはる師言へることあり、有句無句は藤の樹に倚るが如しと、忽然として樹倒るれば藤枯る、句何の処に帰するや。い山呵呵大笑す。疎山云く、某甲四千里に布単を売り来たる、和尚何ぞ相弄することを得たる。い、侍者を喚んで銭を取って這の上座に還せと、遂に囑して云く、向後独眼龍あって子が為に点破し去ることあらん。後に明昭に到りて前話を挙す。昭云く、い山をば頭正しく尾正しと謂ひつべし、只是れ知音に遇はず。疎復た問ふ、樹倒るれば藤枯る、句は何の処に帰するや。昭云く、更にい山をして笑い転たた新ならしむ。疎言下に於て省あり。乃ち云く、い山元来笑裏に刀あり。

 疎山光仁禅師、洞山良价の嗣、い(さんずいに為)山の霊祐禅師、百丈懐海の嗣、明昭徳謙禅師、羅山道閑の嗣。疎山い山に到って問う、承れば師、聞いておりますがっていうんです、有句無句道うも道はざるも藤が木にからまりつく、樹によってのみです、樹倒れりゃ枯れる、そんじゃそのあとどうなると聞く。い山呵呵大笑す。どうですかこれ、いったい疎山は何を聞いたんです、因縁難癖つけたんですか、まったくそうじゃないんです、仏道を求めるにあたって、ああも云いこうも云う、どうだどうだとやるんでしょう、そりゃそいつが仏教そのものではないか、忽然大悟するとき如何と、なんにもなくなったらどうなるんだというんです。い山呵呵大笑、はいよこんなもんだよってわけです。疎山怒り出した、千里の道も遠しとせずに大法の為に訪ねて来たのに、愚弄するな、布単を売り来たるというから、い山侍者を呼んでお-いこいつに銭払ってやれと云った。向後火独眼龍あって、二つの目でもって比較検討、俗人情堕が、一隻眼真正面を向くんです、他日だれかに出会うだろうてと云った、はたして明昭に会って前話を挙す。更にい山をして笑いうたた新ならしむ、そっくりさらけだして示したっていうのにと、疎山言下に省あり、はあっとものみな失せる、思想の延長上にはなかったんです、ひっ担いだ重石が取れた、云く、い山笑裏に刀有り、うっふなんかもうちっとましなこと云え。

頌に云く、藤枯れ樹倒れてい山に問ふ。大笑呵呵豈に等閑ならんや。笑裏刀あり窺得破す、言思道まうして機関を絶す。

 藤枯れ樹倒れてい山に問う、さあなんて云うて問いますか、今日はおはようですか、呵呵大笑、三千里外にぶっ飛ばされてしまいますよ、有耶無耶じゃどうもならんです、笑裏刀あり黙裏雷あり、自分ちらともありゃへっこむんです、なんにもなきゃ指一本で山を動かす、言語や思想じゃない、もと我らのありよう大虚の洞然、毛ほどの隙もないんです、かくありこうあり機関を絶す。なにしろこれを味わって下さい。

画像  さるすべり/2005年7月20日・静岡市葵区
by tozanji | 2005-07-25 00:00 | 従容録 宏智の頌古


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